今、金融業界では急速にDX化が進んでいます。
特にメガバンクでの取り組みは顕著で、三菱UFJ銀行では2025年までに窓口業務の7割をデジタル化すると発表しました。
しかしながら順調にDX化が進んでいるのは大規模な金融機関が中心で、地方や信用組合といった小規模の金融機関では、思ったようにデジタル化が進んでいないのが現状です。
今回は、「金融DXとは?」「金融DX化の現状と課題」「金融DXによって実現できること」について詳しく解説していきます。
実際のDX事例もあわせて紹介していきますので、金融DXを検討している人はぜひ参考にしてください。
金融業界の課題である金融DX事例とは?
金融DXとは、デジタル化を推進することで業務の効率化やサービス改善を図り、顧客サービスの向上や、新たなビジネスモデルの開拓を可能とすることです。
もともと金融業界はセキュリティ面を重視してきたため、システムを自社で構築して運用するオンプレミスを採用してきました。
オンプレミスで設計・拡張を繰り返し、複雑化した金融システムは、今後老朽化を迎え、最悪の場合、システム停止を招く可能性があると懸念されています。
経済産業省のDXレポートによると、こうした事態は2025年以降頻発するとみられており、早急に解決しなければ、日本経済にとって大きなダメージになると忠告しているのです。
こうした「2025年の壁」問題を解決するのが、金融業界のDX化です。金融業界は「信用」や「ミスを犯さない」ことを重視するため、業務コストが高く、手続きも煩雑でした。
口座をひとつ開設するために、何枚もの書類に同じような内容を、手書きで記入したことはないでしょうか。
例えばこうした窓口業務にタブレット端末を用いれば、一括入力が可能になり、システムへのデータ送信もスムーズに行えます。
金融DXは、顧客にとってメリットが大きいだけでなく、金融機関そのものの業務効率化を図り、グローバルな競争で戦うために必要なことなのです。
金融業界におけるDX化の現状と課題
では実際の金融業界におけるDX化の現状は、どうなっているのでしょうか。そしてそこから見えてくる課題とは何なのでしょうか。
金融業界におけるDX化の現状と課題①「レガシーシステムからの脱却」
経済産業省のDXレポートによると、既存の金融ITシステムはブラックボックス化しており、結果として維持費がかかる「レガシーシステム」になっていると記されています。
既存のレガシーシステムにかかる運営コストが足かせとなり、DX化を進めたくても十分な投資ができないといった課題があるのです。
金融業界におけるDX化の現状と課題②「DX人材の確保」
日本におけるIT人材不足は深刻です。しかも金融業界で長年使用されてきたプログラミング言語は、「FORTRAN」や「COBOL」といった古いタイプのものであり、若い世代のプログラマーでは対応できないことが多々あります。
これらのプログラミング言語を扱える人材は、今後定年を迎えます。
その前に技術を継承しなければならないのですが、ソースコードの難易度が高く、金融DX人材の確保は進んでいません。
金融業界におけるDX化の現状と課題③「顧客のITリテラシーにばらつき」
タブレット端末やスマートフォンなどの普及が進み、ITリテラシーが高い顧客が増えています。一方で、スマートフォンやPCを使いこなせない高齢者など、ITリテラシーは顧客によってばらついています。
すべてをDX化してしまうのではなく、顧客によって業務フローを見直したDX化を進めていくことが重要です。
金融業界の課題解決・DX事例で実現できること
金融業界において、DX化は早急に解決すべき問題です。では実際に金融DXを推進していくと、どのようなことが実現できるのでしょうか。
金融業界の課題解決・金融DXで実現①「クラウド導入と業務効率化」
従来、セキュリティへの不安から、金融業界でのクラウド導入は避けられてきました。この風潮に風穴を開けたのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)です。
2017年当時、「MUFGショック」と呼ばれて金融業界に大激震が走り、その後、金融業界だけでなく他業種でもクラウド導入が加速したと言われています。
金融業界でクラウド導入するメリットは様々で、顧客管理・資産運用・リスク・決済など、多くのシステムがクラウド化の対象です。
これらのシステムをクラウド化することで、業務の大幅な効率化が見込めます。
もちろんシステムの信頼性・可用性が大前提であるため、クラウドサービスへの移行は慎重に行うべきです。
金融業界ではリスクを最小限に抑えるために、段階的に移行していくのが一般的ですが、オンプレミス運用時と比較すると、コスト削減・運用管理の負荷軽減・幅広い拡張性など、金融DXで得られるメリットは大きいでしょう。
金融業界の課題解決・金融DXで実現②「AIやRPAによる自動化」
AIによるヘルプデスク業務の自動化は、金融業界でも進められています。AIの学習機能は進化しており、24時間チャットボットでの問い合わせ対応は、顧客満足度の向上につながります。
またAIに大量のデータを学習させることで、将来的な株価予想への活用も可能です。
RPAとは、パソコンでの事務作業を自動化するソフトウェアロボット技術のことです。
例えば毎日大量のデータを扱う事務センターでは、RPAを導入することで人為的なミスを大幅に減らすことが可能になります。
金融業界の課題解決・金融DXで実現③「IoTとオープンAPIの活用」
IoT(モノのインターネット)は世界中に革命を起こしました。昔は回線を通してのみつながっていたインターネットは、現在スマートフォンやタブレット、そしてデジタル情報家電などとつながり、生活環境を大きく変えています。
もちろんこの流れは金融業界でも有効で、振り込みや資産運用、製品購入の際にIoTを活用しているケースがあります。
例えば、今まではATMや銀行窓口で支払いをしなければならなかったのが、モバイル端末などからも自動支払いが可能となりました。
金融機関でオープンAPIを導入すれば、連携している他の金融機関のデータ入手が簡単になり、より正確な顧客の財務情報を知ることが可能です。
金融DXの導入で、顧客への新たな金融サービス提案や、同じ金融機関の長期利用などが期待できます。
金融業界の課題解決・金融DXで実現④「生体認証とスマートATMの導入」
スマートATMは、一般利用者にとって非常に魅力的なサービスです。通帳の記帳や残高照会、振り込みなどが自分のスマートフォンで行えるため、ATMを探したり列に並んだりする必要がなくなりました。
また24時間対応可能なサービスであるため、顧客満足度もアップしています。
こうしたスマートATMでは、セキュリティ面が不安視されますが、生態認証を組み合わせることで、高いセキュリティ性を確保しています。
またキャッシュカードが盗難にあった場合、生態認証を登録しておけば、第三者によって勝手に引き出されるといった被害を防ぐことができます。
金融業界でのDX化は、セキュリティ面の不安解消といった課題解決にも有効です。
金融業界の課題解決・金融DXで実現⑤「暗号資産とブロックチェーンの活用」
日本の銀行は、今までビットコインなどに代表される暗号資産取引とは、一線を画してきました。
しかしながら価格変動の少ないステーブルコインを活用することで、海外企業との国際送金にかかる手数料や時間を大幅に減らすことが可能になります。
また仮想通貨の基盤となるブロックチェーン技術は、中央サーバーを持たない分散型の台帳技術です。
現在の金融業界では、高度なセキュリティに守られた中央サーバーに情報が集約されています。
しかし、コンピューターウィルスやハッカーによる侵入は日々繰り広げられていて、そこにかかる膨大なコストやセキュリティシステムの脆弱性は金融業界の課題です。
ブロックチェーンは世界中にデータを分散して管理するシステムなので、非常に高いセキュリティが実現できます。
また管理コストも低く抑えられるため、結果として取引手数料を安くすることも可能です。
金融業界の課題解決・金融DXで実現⑥「新たなサービスの開発」
金融DXが進めば、顧客は店舗に行かなくても、24時間どこでも銀行取引が可能です。また、今までアプローチできていなかった人を、顧客として招き入れる可能性も広がります。
オンライン証券取引では、新たな投資家の確保だけでなく、投資家にとって選択肢の幅も広がります。
ロボアドバイザーによる投資アドバイスでは、目的やリスクに応じた投資商品を選定でき、顧客満足度の向上につなげることが可能です。
金融業界のDX事例
では実際に金融業界ではどのようなDX事例があるのか、企業の取り組みを見ていきましょう。
金融DX導入企業①三菱UFJフィナンシャル・グループ
日本最大の金融グループである三菱UFJフィナンシャル・グループでは、2017年に「デジタルトランスフォーメーション戦略」を掲げています。
これは顧客の利便性向上、業務プロセスの改革、国内外でのチャネル変革を目指すものです。
外部にシステム管理を移管することが御法度であった金融業界で、グループ全体の共同システム基盤をクラウド上に構築するということは、業界初の試みでした。
MUFJはクラウド最大手のAWSと組み、コストの大幅削減、リスク管理の向上を達成しています。
MUFJでは複数のクラウドプラットフォームを採用し、ひとつの外部委託プラットフォームのみが権力を持たないような工夫もしています。
またMUFJではDX化の取り組みをオンラインカンファレンスで開催するなど、顧客に向けた情報発信が盛んです。
来店客数が半減する中、インターネットバンキングの利用者は倍増するなど、顧客が求めるサービスは変化しています。
こうした変化に対応できるよう、MUFJでは法人・個人の顧客に対して非対面中心で取引を行うデジタルサービス事業本部を新設、膨大な数の顧客に厚いサービスを提供するにはDX化が必要不可欠であるとはっきり述べています。
MUFJはこれからもデジタルサービスの推進に力を入れ、付加価値の高いサービス提供の金融デジタルプラットフォーマーを目指す企業の代表格といえるでしょう。
金融DX導入企業②みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループで提供している「J-Coin Pay」は、キャッシュレスサービスのプラットフォームです。
スマートフォンにアプリを入れることで、「送る」「もらう」「支払う」といった行為が簡単にできるようになります。
「送る・もらう」では、すべてのユーザー間での送金手数料が無料、しかも即時に反映されます。アプリへのチャージは、提携する金融機関から無料で入金することができ、アプリから口座へ戻すのも無料です。
お店での決済も、アプリのバーコードを見せれば完了と、とても便利なキャッシュレスサービスです。
みずほフィナンシャルグループの金融DXは、顧客にとって身近なDXサービスといえるでしょう。
金融DX導入企業③ゴールドマン・サックス
ゴールドマン・サックスは、金融機関の中でも自社でIT開発を行うDX化に積極的です。
フルタイム従業員のうち、およそ3分の1がIT人材であると言われており、如何にデジタルイノベーションに力を入れているかがわかるでしょう。
特に力を入れたのが、ゴールドマン・サックスの中核業務、トレーディング部門のIT化です。
投資銀行であるゴールドマン・サックスは、自社の資金を使い株式・債券・為替などを取引し、そのリターンによって利益を得ます。かつて600人のトレーダーが在籍したNY本社では、DXによりたった2人のトレーダーしか残りませんでした。
現在、株式売買の自動化プログラムを支えているのは、200人ものITエンジニアです。これだけの数のIT人材を抱えるコストは相当なものですが、「4人のトレーダーを1人のITエンジニアに置き換えられる」とマーティン・チャベス氏が言っていたように、トレーディング部門のAI化によって大幅な人件費削減を実現しました。
金融DXは、顧客だけでなく働く側にとっても大きなメリットがあるのです。
金融DX導入企業④JPモルガン・チェース
JPモルガン・チェースは、独自の仮想通貨「JPMコイン」を開発したことで知られています。
JPMコインの活用で、ブロックチェーンを活用した企業間の即時決済が可能になり、手数料も大幅に減らすことが可能となりました。
2019年に米ドル建てのみだったJPMコインは、2023年にユーロ建て取引が開始され、世界各国24時間体制で国際決済可能となっています。
金融DX導入企業⑤東京海上ホールディングス株式会社
1879年創業の東京海上は、当初「保険事業」を中心とした業務内容でしたが、頻発化する自然災害やサイバ―リスク、健康寿命を延ばすためのヘルスケアの重要性といった社会課題解決へ業務をトランスフォームしています。
具体的には「サイバー」「中小企業支援」「GX」「ヘルスケア」の4領域を重点的課題とし、テクノロジーやデータを活用したDX推進事業として新たな体制を構築しました。
金融DX化をご検討の方はMabuhayTechへ
様々な業界でDX化が進む昨今、金融業界でもDX推進の動きが高まっています。
しかしながらその流れは大手金融機関が中心であり、地方や信用組合といった小規模金融機関では、未だDXは進んではいません。
もともと高いセキュリティ性を求められる金融業界では、オンプレミス型の金融システムを採用してきました。
しかし現行システムは老朽化し、2025年以降トラブルが頻発、最悪の場合システム停止を招く可能性があると予測されています。
今金融業界では、レガシーシステムから脱却し、DX化を進めていくことが早急の課題です。
クラウド導入・AIやRPAによる自動化・オープンAPIの活用など、できることから徐々に移行していくことが、システムトラブルを防ぐことになるでしょう。
金融DXについては、様々な企業が参加して、金融DXフォーラムやカンファレンスを行っています。
全国各地で無料開催しているだけでなく、オンラインでも開催しているので気軽に参加してみるのがおすすめです。
MabuhayTechでは、金融業界のDX化をサポートしています。フィリピンに拠点を置くMabuhayTechは、IT人材の確保に悩む日本企業と、フィリピンの優秀なエンジニアをつないでいます。
金融DXを進めるスマートフォンアプリの開発、国際送金のデジタル化など、金融業界で取り組むべきDXは数多くあります。
「どこから取り組めばいいのか」「どういったDX化があるのか」など、まずはMabuhayTechにぜひご相談ください。
金融業界の明るい未来を一緒に考えていきましょう。