高騰が続く人件費がを削減できるオフショア開発は、IT分野において今後ますます広がっていくことは間違いありません。
いろいろなメリットがあるオフショア開発ですが、海外ならではのリスクも存在します。
そこで今回は、「オフショア開発のリスク」「オフショア開発のリスクを解決・回避する方法」「オフショア開発のリスク軽減のポイント」などについて詳しく解説していきます。
オフショア開発は、確かにいくつかのリスクを孕んでいますが、あらかじめリスクに対する備えをしておけば、企業にとって大きな成果を上げることが可能です。
オフショア開発を導入するうえで不安を抱えている企業や担当者の方は、この記事を読んでぜひ参考にしてください。
オフショア開発のリスクとは
日本国内での開発では問題にならなくても、海外では大きなリスクとなり得ることがあります。
トラブルが起こった時、日本国内ならすぐに対処できることが、海外に委託するオフショア開発ではすぐに対応できないことは少なくありません。
「こんなはずではなかった」とならないために、オフショア開発にはどのようなリスクがあるのか知っておきましょう。
オフショア開発のリスク①「コミュニケーションに齟齬が生じやすい」
オフショア開発では、コミュニケーションに日本語を用いることはほとんどありません。日本にいるスタッフが、開発国の現地語を理解していることも少なく、多くのケースでは英語を用いてコミュニケーションをとることになります。
しかしながら母国語でない言語でのコミュニケーションは、時として違った解釈を生み、思ったように作業が進まないことがあります。小さなコミュニケーションの違いが、のちに大きなトラブルとなってしまうことも想定できるのです。
また、よく言われるのが国民性の違いです。日本では作業を進めるにあたって、細かく進捗状況を報告するのが当たり前と考えます。これは日本企業に「報連相」の習慣があるからです。
しかしながら海外では、自分の責任で仕事を進めていくのがベストだと考え、こちらが気づいた時には、間違った仕様で作業がどんどん進んでしまっていた、というケースもみられます。
オフショア開発では、プログラミングスキルなど技術的なことに目が行きがちですが、物理的な距離があるからこそ、コミュニケーションがカギを握ると考えた方がいいでしょう。
オフショア開発のリスク②「クオリティにばらつきが生じやすい」
オフショア開発の問題としてよくあげられるのが、クオリティにばらつきが生まれてしまうことです。
どのような業界においても、“日本製”の品質は高く評価されています。これは日本企業の本質が、「初めから完璧」を求める気質であるからです。
日本企業、そして日本人はひとつのものを作り上げるとき、「より良いものを作りたい」と考え、それに向けて努力します。
たとえそれが仕様書に書かれていなかったことでも、作業中に「この方がいい」と思えば、周りに相談し、上司に意見を仰ぎ、より良い成果物を目指す文化が根付いてきました。
しかしながら海外は違います。
「仕様書に指示されていないことはやらない」「自分が担当した部分への責任はあるけれど、ほかの人の開発場所には関知しない」といったことが普通に起こるのです。
それどころか、「とりあえず成果物を納めればいい」「問題点は後から直せばいい」と考えるエンジニアも少なくありません。
日本では納品までに何度もテストチェックを行い、完璧な成果物を納品するのが当たり前ですが、海外では指示がなければテストチェックはされず、不具合があるまま納品といったことも珍しくないのです。
オフショア開発のリスク③「コストオーバーする可能性や納期の遅延」
日本人は、海外と比較して数字に対する意識が高いと言われます。
例えば、決められた予算の中で最高の出来を目指すのは、日本人にとっては当然のことです。納期に関しても同じで、「納期を守る」のは大前提であり、予算や納期は「守るべきもの」という考えを持って仕事をしている人が多くいます。
ただし、これを海外にそのまま当てはめてしまうと、お互いにストレスとなり、時には大きなトラブルに発展する可能性があります。
海外では仕事とプライベートを分けて考え、「残業しない」「家族を優先する」といった考えが基本で、納期が迫っていても「プライベートを犠牲にして納期に間に合わせる」と行動する人は稀です。
しかしながら国民性や海外の習慣は、その土地に長く根付いているものであり、日本人の常識を強引に押し付けるのはNGです。
オフショア開発国の文化をきちんと理解し、お互いが納得できる解決法を見つけることが大切です。
オフショア開発のリスク④「情報漏洩のリスク」
オフショア開発で難しいとされるのが、情報漏洩のリスクです。
特にシステム開発における成果物は、“ソースコード”という形のないもので、現地のエンジニアやスタッフが簡単に持ち出せてしまいます。
日本では、個人情報や機密情報の漏洩について国民全体が高い意識を持っていますが、途上国や新興国であるオフショア開発国では、セキュリティ教育や企業のコンプライアンスに対する意識が低いことを考慮しなければなりません。
日本側で万全なセキュリティ対策を出来れば一番いいのですが、情報セキュリティ対策にはコストがかかるため、予算削減を目的としたオフショア開発では難しい面も否めないでしょう。
オフショア開発のリスク⑤「世界情勢や外交関係の影響を受ける」
コスト面だけに目が行きがちなオフショア開発ですが、依頼する国と日本の外交関係や、その国の歴史的問題を視野に入れることは重要です。
ニュースでも取り上げられるように、国民が反日感情を抱き、時には厳しい反日デモが起きる国も存在します。たとえ旅行先としては人気の国であっても、外交問題を抱えている国との経済活動はリスクを伴います。
日本に対して友好的な国であっても、国内の社会情勢に不安を抱える国では、思いもかけずインフラの遮断にあったり、さまざまな経済的な規制を受けたりすることがあります。
実際に2012年にあった中国の反日デモや、2021年のミャンマーのクーデターでは、日本企業も大きなダメージを受け、戦略の見直しを迫られた企業も少なくありませんでした。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法
オフショア開発にはいくつかのリスクが存在する点は、理解していただけたことでしょう。
オフショア開発を成功させるには、これらのリスクを、解決または回避できるのがベストです。
リスクへの対処法を具体的に解説していきます。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法①「依頼先の国は日本との外交関係や内政状況を考慮して選ぶ」
まずは国選びです。
オフショア開発を依頼する国は、日本と外交関係が有効である国を選ぶべきでしょう。
いくら開発企業とのマッチングが良くても、外交関係や国内の政治問題は、企業がコントロールできる問題ではありません。
外交関係や内政状況は、検討・判断することが非常に難しいことです。
過去の状況を鑑みて、今現在だけでなく中長期的に国が安定できるかどうかを判断することが大切です。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法②「ブリッジSEとして日本人を採用する」
「コミュニケーションの齟齬」は、日本人のブリッジSEを採用することで解決できます。
ブリッジSEとは、日本企業と現地スタッフとのコミュニケーションを橋渡しするシステムエンジニアを指します。
ブリッジSEはエンジニアとしてのスキルはもちろんのこと、日本語や日本文化を理解し、現地のスタッフへ日本企業の要望を伝えるのが仕事です。
日本人のブリッジSEを採用することで、文化や言語の違いによる行き違いが生じることを回避できます。
日本企業が作成した仕様書は、海外のスタッフにはうまく伝わらないことが多々あります。
例えば日本人は「行間を読む」ことが得意とされますが、海外では「書かれていないことはやらない」のが普通です。
ブリッジSEは仕様書作成の際に、お互いの齟齬が発生しないように理解しやすいようにアドバイスをくれます。
物理的に離れているオフショア開発だからこそ、相手が理解しやすい仕様書は作業効率を高めるポイントです。
またブリッジSEがいることで、開発国の文化や習慣を知ることもでき、無理なスケジュールを組むことなく作業を依頼することが可能になります。
日本人のブリッジSE採用は、人件費の面で負担が大きくなりますが、オフショア開発を成功させるにはぜひ取り入れた方がいいでしょう。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法③「作業内容は仕様書に具体的に明記する」
クオリティのばらつきは、仕様書への作業内容を、より具体的に記載することで避けることができます。
先ほども少し述べましたが、日本人同士であれば、そこまで詳しく書かなくても伝わるものは多いです。
この共通認識は、日本国民という立場だからこそ成り立つのであり、海外では一切通用しません。
海外では往々にして「書いていないことはやらない」というスタンスです。依頼したい内容は、すべて仕様書に盛り込むことが重要になります。その際、文章だけでなく、写真や図など視覚的な要素を用いると伝えやすいでしょう。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法④「納期やコストに余裕を持たせる計画を立てる」
日本人は、納期に間に合わないときに、残業や休日出勤などをしてでも間に合わせようとします。しかし海外ではプライベートを重視するため、ギリギリのスケジュールを組んでしまうと納期遅延のリスクが生じます。
また時差が生じない国内開発では、トラブル発生時にはすぐに対応できますが、海外に委託するオフショア開発ではそうはいきません。余裕を持った納期やコストの設定は、現地スタッフのパフォーマンス向上にもつながります。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法⑤「進捗は定期的に確認し、テストを行う」
こまめな進捗状況の確認や都度テストチェックを行うことは、成果物のクオリティを保ち、納期遅れを防ぐために有効です。
「設計 → 実装 → テスト」を繰り返すアジャイル型の採用も、オフショア開発には向いています。
納品前の最終テストだけでは、致命的な不具合が見つかることもありますが、早期修正ができるアジャイル型なら、そうしたリスクを回避することが可能です。
オフショア開発のリスクを解決・回避する方法⑥「セキュリティ管理を強化する」
情報漏洩へのリスク回避は難しい問題です。なぜならコスト削減とセキュリティコストは、相容れない問題でもあるからです。
プロジェクトルームへの入退室管理設備など、ハード面に費用をかければ、当然開発コストは増えていきます。
まずは現地のエンジニアやスタッフにセキュリティ教育を行うのが効果的です。昨今、日本でも、社員に対して情報セキュリティ教育を行う企業が増えています。
こうした日本版教育システムを参考にしたセキュリティ教育を、現地スタッフにも導入し、定期的に機密保持の同意書へサインさせるなど対策をとるといいでしょう。
システムへのログイン記録は必ず日本側で管理し、定期的に内容をチェックすることも忘れないことが大切です。
オフショア開発のリスク軽減のポイント
ここまで述べてきたことは、オフショア開発に対して日本企業側が行う解決・回避法です。
加えて、押さえておきたいポイントがあります。それがソフト面です。IT分野であっても、作業するのは「人」です。少しでもリスクを減らすためにはどうすればいいのでしょうか。
オフショア開発のリスク軽減のポイント①「積極的コミュニケーションをとる」
距離が離れている日本と開発国ですが、現地のスタッフとは積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
普段からコミュニケーションをとっていれば、相談もしやすく、お互いに信頼関係が生まれます。
そうすることで、些細なミスや問題を報告しやすくなり、結果としてよい成果物が仕上がることへつながります。
現地に行って顔を合わせるだけではなく、ネット環境をうまく利用して、コミュニケーションを密にとっていきましょう。
オフショア開発のリスク軽減のポイント②「国民性の違いを理解する」
開発を依頼する国の文化を尊重し、国民性に理解を示すことは大切です。
日本人にとっては当たり前のことでも、開発国の人にとっては当然ではありません。逆もしかりです。そしてどちらが正しいということではないのです。
お互いの国民性を理解しあい、どちらか一方の意見を押し付けるのではなく、双方で話し合って進めていくことが重要です。
オフショア開発のご相談はMabuhayTechへ
メリットが大きいオフショア開発ですが、当然リスクもあります。
言語が異なるスタッフとのやり取りでは、コミュニケーションに齟齬が起きやすく、トラブルになる可能性があります。
またクオリティのばらつきや納期遅れ、情報漏洩のリスクなども考えられるリスクです。
ただしこれらのリスクはあらかじめ対処することで、解決・回避できることでもあります。
日本人のブリッジSEを採用したり、仕様書の内容を見直したり、日本と友好的な外交関係を築いている開発国を選んだり、日本企業ができることは様々です。
加えて、現地スタッフと積極的にコミュニケーションをとることで、ソフト面でも開発をサポートしていきましょう。
MabuhayTechはフィリピンのマニラに拠点を置き、日本企業のオフショア開発をサポートしています。
フィリピンでは、真面目で優秀なITエンジニアがたくさん育っています。
彼らと日本企業をつなぎ、一緒にデジタルテクノロジーを築いていければ、双方に明るい未来が見えてくるはずです。
悩んでいるよりも、まずはMabuhayTechに相談してください。夢を叶えるための方法を一緒に考えていきましょう。