近年、消費者の購買プロセスに大きな変化が訪れています。
ECサイトの普及や無人レジの導入など、小売業界で推進されているデジタル化の波はいまだとどまる所を知りません。
今回の記事では、小売業界が進めるべきDXについて、「小売業界DXとは?」「小売業界の現状と課題」「小売業界DXのメリットや変化」など詳しく解説していきます。
実際の企業で導入された小売業界DXの事例も紹介していますので、DXを検討している方はぜひ参考にしてください。
小売業界DXとは?
小売業界DXとは、小売全般のサービスや業務において、AIやIoTを用いて新たな仕組みを実現する取り組みを指します。
2020年より感染拡大した新型コロナウイルス感染症をきっかけに、人々の購買プロセスや顧客ニーズは大きく変わりました。
ECサイトを利用した買い物や非接触型決済の無人レジ導入など、小売業界における経営体制の抜本的な見直しは急務です。
今後、小売業が売り上げを伸ばし、生き残りをかけて経営コスト削減を実現するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要不可欠であることは間違いありません。
今、小売業界で進められているのはデジタルツールを用いた業務改善であり、デジタル化を活かしたビジネス変革とまではいかないのが現状です。
小売業界では今後、受発注システム業務や検品、請求処理業務などでDX導入を図ることが期待されています。
顧客行動やニーズが多様化している今、小売業界DXはますます加速していくことが重要と言えるでしょう。
小売業界DXの現状と課題
小売業界のデジタル化やIT活用は広まりつつあるとはいえ、まだ十分とは言えません。
では小売業界におけるDXの現状と課題はどうなっているのでしょうか。
小売業界DXの現状と課題①既存システムの老朽化
小売業界の中には、古いシステムをそのまま使い続けている企業が多くあり、こうした既存システムの老朽化によってDX推進が上手くいかなくなる事例は決して少なくありません。
単にシステムが老朽化しているというだけなら、システムを丸ごと新しくするだけで問題解決を図れますが、もし既存システムの仕組みを社内でだれも理解していない、つまりシステムがブラックボックス化している場合は問題です。
システムのブラックボックス化は、新しいシステム導入の壁となり、データが上手く引き継げない、データ共有に膨大なコストと時間を有するなど大きな課題となります。
小売業界DXの現状と課題②人材不足
小売業界の人手不足は深刻です。
株式会社帝国データバンクが公表している「人手不足に対する企業の動向調査」によると、各小売業で人手不足を感じている企業は約半数に上ります。
日本の少子高齢化によって他業種でも人手不足は課題となっており、小売業の人手確保、特にDXを進めるためのDX人材の確保は急務と言えるでしょう。
ただでさえ人手不足の中、DX推進に必要なIT人材を新たに確保することは極めて困難でもあるのです。
小売業界DXの現状と課題③多様化する消費者ニーズへの対応
小売業でDXが急務とされている理由のひとつに、多様化する消費者ニーズへの対応があげられます。
インターネットの普及に伴い、人々のネット通販利用は急速に広まりましたが、コロナ禍で拍車がかかり、様々な年代の人がECサイトを利用するようになりました。
また全国どこからでも検索できるインターネットのおかげで、遠方であっても商品やサービスの情報を得ることが可能になっています。
例えば、実店舗で商品を確認後、ECサイトで購入するといった消費者もおり、消費者ニーズへの対応は多様化しているのです。
小売業界DXのメリット
小売業界がDXを推進するメリットについて解説していきます。
小売業界DXのメリット①顧客満足度の向上
ひとつめは、顧客満足度の向上が期待できるという点です。
小売業界は慢性的な人手不足により、従業員への負担が増加しています。
そのため長時間労働につながりやすく、従業員は体力的・精神的に疲弊しがちとなり、体調を崩す従業員が出たり、集中力低下によるミスが起きやすくなったり、結果としてサービス低下を招くことになります。
セルフレジやスマホアプリによる決済システムを導入することで、従業員の負担が軽減され、結果として顧客へのサービス対応に集中できる体制が整うのです。
ほかにも、決済時に得られたデータをもとに、「どの商品が人気なのか」「混雑する時間帯」「ターゲット層」などを正確に分析し、販売戦略に活かせます。
小売業界DXのメリット②業務効率化による省人化運営が可能
小売業DXを進めれば、業務効率化による省人化運営も可能です。
例えば小売業では、商品の仕入れ・在庫管理は大切な業務なため、アナログ業務が主体の企業ではかなりの時間をかけて仕入れ・在庫管理をすることになります。
デジタル技術を活用した在庫管理をすれば、リアルタイムで正確な在庫がわかり、複数店舗での一括管理ができるようになります。
また小売業にとって、卑劣な万引き行為は経営を圧迫する原因です。
AIカメラによる監視システムを導入し、不審な動きをした人物を感知するとアラームが鳴るように設定すれば、万引き行為や危険な行為への対応がスムーズになり、警備員や従業員の数を減らすことも可能です。
小売業界DXによってもたらされる変化
次に、小売業界DXによってもたらされる変化について解説していきます。
小売業界DXで変わること①店舗運営
実店舗の運営でも小売業界DXを活かすことができます。
例えばAIによる在庫管理の自動化は、従業員の負担軽減のほか過剰発注や売れ残りを回避することが可能です。
無人レジやキャッシュレス決済の導入すれば、混雑時に人手不足によって会計を待たせてしまう心配もなくなります。
小売業界DXで変わること②ECサイト運営
ECサイトは、小売業界にとって最も重要なDX要素といっても過言ではないでしょう。
ECサイトでは単に商品やサービスを提供するだけでなく、購買データや閲覧データを収集・分析することが可能です。
これらのデータを活かし、顧客それぞれのニーズにあわせた商品・サービスを提案することができるようになります。
ほかにも、商品を購入した顧客が書き込めるレビュー機能を搭載することで、実際に手に取ることができないというデメリットがカバーされます。
小売業界DXで変わること③マーケティング
小売業DXを進めることで得られる顧客データは、今後のマーケティングに活かすことが可能です。
例えばAIエンジン搭載のネットワークカメラを導入すれば、来店客の性別・年代といった顧客属性を正確に取得することができ、来店客の導線分析などマーケティング戦略の材料となるでしょう。
小売業界DXで変わること④物流
DXは「早く」「正確」な行動を得意としています。
倉庫内作業をロボット化すれば人手不足の解消だけでなく、正確かつ迅速に出荷作業をすることができ、発注ミスなどの人為的ミスを削減することができます。
また配送の一部をドローンで行う実験が進められていますが、実用化されれば物流の2024年問題解決手段となるでしょう。
小売業界DXで変わること⑤OMO
「OMO(Online Merges with Offline)」は、今後の小売業界を生き残るうえで重要なポイントと考えられています。
従来、実店舗(オフライン)とECサイト(オンライン)は別なものとして考えてきました。
しかしながらインターネットが普及した今、顧客はスマートフォンを持ち歩き、オンラインの状態でいることが当たり前となっています。
実店舗にいるときもオンラインの状態であり、オンラインとオフラインを分けて考える必要はないのです。
「OMO(Online Merges with Offline)」の概念は、オンラインとオフラインを分断せずに融合するということです。
実店舗で購入したデータをもとにECサイトで訴求するなど、オンラインとオフラインの垣根を超えたマーケティング戦略が可能になります。
小売業界のDX事例
小売業界DXで実現可能なことはたくさんありますが、どのように進めたらよいのか悩むことも多いでしょう。
そこで実際に小売業界DXを導入している企業のDX事例を、3つ紹介します。
小売業界のDX事例①キリンビバレッジ株式会社
日本を代表する清涼飲料水メーカーであるキリンビバレッジ株式会社は、主力商品である「生茶」を通じて、ラベルレスペットボトルやリサイクルペットボトルの導入を進めています。
環境保全の声が高まる中、「生茶」の取り組みが売り上げにどう貢献されているのかを明確にするため、マーケティングツール「Go Insight」を導入、売り場から購入に至るまでの顧客の行動パターンを可視化し、店頭POP設置の有無による効果検証を行いました。
結果、店頭POPを設置した店舗の方が「生茶」への接触回数を向上させることがわかり、環境保全の訴求効果が証明されたDX事例となりました。
小売業界のDX事例②株式会社平和堂
滋賀県彦根市を中心にスーパーマーケットを展開する「株式会社平和堂」では、AIを活用した需要予測発注システムを導入しています。
従来、人の手により発注業務を行っていましたが、時間がかかる作業の上、判断ミスによる過剰発注や在庫不足に至ることがあり問題となっていました。
そこでAIを活用した需要予測発注システムを導入し、過去の販売実績・天候などの情報を学習させ、自動で商品を発注するようなDX改革を行ったのです。
このDX事例の効果は、発注業務時間の80%削減を達成、作り出した時間を顧客とのコミュニケーション促進などに充て、より良い店舗づくりの時間に役立てています。
小売業界のDX事例③イオン株式会社
日本全国にスーパーマーケットを展開しているイオン株式会社は、積極的にDXを推進している企業です。
イオンではAI技術を活用した「空調エネルギー削減システム」を導入し、二酸化炭素排出量を削減するDX事例が行われています。
店舗の内外にAIカメラや温度計を設置、人の流れや室温などのデータを「空調エネルギー削減システム」を通して収集することで、AIの空調予測に基づいた風量・温度設定の自動調節を実現しました。
DX化をご検討の方はMabuhayTechへ
インターネットの普及により、私たちの生活は大きく変わりました。
なかでもECサイトが充実したことで、販売プロセスは多様化しています。
私たちの生活に密着している小売業界は、多様化する顧客ニーズに応えるべく変革を迫られており、その手段としてDXの導入が必要とされているのです。
小売業界でのDX推進は、受発注にかかる時間を大幅に軽減できたり、顧客満足度の向上につながったり、多くのメリットが期待できます。
実際に導入されたDX事例では、DXによる訴求効果が証明されたり、需要予測発注システムにより発注業務の大幅な削減に成功したり、成功を収めている企業が数多くあります。
MabuhayTechはフィリピンと日本に拠点を置き、日本企業のソフトウェア開発サービスを手掛ける会社です。
日本では各業界においてDX推進が求められています。
しかしながら日本国内には十分なITエンジニアがおらず、思ったようにDX化が進められないといった現状があります。
DXで得られるメリットは、マーケティングや業務効率化、人手不足の解消などたくさんあります。
大企業のDXばかりが注目されがちですが、中小規模の事業者にとってもDXのメリットは大きいでしょう。
MabuhayTechでは小売業界をはじめ、あらゆる業界、企業規模を問わないDX推進のためのシステム開発を手掛けています。
フィリピンは国を挙げてIT人材の育成に取り組んでおり、若くて優秀なITエンジニアが数多くいます。
DXは、日本企業が抱える課題を解決し、企業の明るい未来、顧客満足度の向上、日本経済全体の活性化が期待できる社会全体の変革です。
「DXによる企業変革をしたい」「まずはできることから始めたい」「コストを抑えたDX化を導入したい」など、DXに対するご要望があればMabuhayTechにご相談ください。
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