IT技術を導入したデジタルトランスメーション化は、不動産業界にも押し寄せています。
例えば不動産契約の際に、大量の契約書にサインさせられること、こうしたアナログ手続きをデジタル化させていくのが不動産DXで可能な事例です。
しかし、不動産業DXは、決して進んでいるとは言えない状況だと言われています。
今回の記事では、「不動産業DXとは?」「不動産業DXの現状と課題」「不動産業DXのメリット」について詳しく解説していきます。
実際に不動産業DXを導入した企業や事例についても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
不動産業のDXとは?
不動産業におけるDXとは、業務にIT技術を導入し、アナログ作業をデジタル化していく動きのことを指します。
不動産業界では、物件や顧客の管理、契約書などの書類手続きを手書きで行っており、業務の大半がアナログ作業となっています。
また物件の内見対応は対面式など、従業員への負担は多大です。
こうした現状は長時間労働や慢性的な人手不足を引き起こし、結果として離職率も高くなるといった悪循環を生み出しています。
不動産業界全体が抱える課題解決として期待されているのが、不動産業DXです。
ここでひとつ知っておきたいのが『不動産テック』と呼ばれるDXですが、不動産業DXと不動産テックは分けて考える必要があります。
不動産テックとは「テクノロジーを使った不動産業界の課題解決や商習慣の改善」を指していて、一見すると不動産業DXと変わりないように見えます。
しかしながら、不動産テックはスタートアップ企業が導入できるDXでもあるため、既存企業が「変革」のために導入するDX化とは分けて考えましょう。
不動産業DX事例の現状と課題
不動産業界は物件や顧客など膨大なデータを扱う業務であるのに、アナログ作業が常態化しています。
そのため従業員の負担は重く、残業の多さや離職率の高さが問題となっています。
日本が直面する長期的な人口減や景気動向などにより、不動産業界のDX化は急務とされていますが、DX事例の現状と課題はどうなっているのでしょうか。
不動産業DX事例の現状と課題①前例が少ない
不動産業界全体でみると、DX化の必要性を感じているのに、まだ導入に至っていない企業が数多くあります。
この原因は、不動産業DXの前例が少ないことが考えられます。
一部の大手不動産企業ではDXが進んでいますが、こうした事例をすべての不動産業者にそのまま当てはめることは難しいでしょう。
DX化したい内容が企業によって異なっていたり、同規模の他社での導入事例が無かったり、不動産業DX事例の少なさは、DX推進の大きな壁となっています。
不動産業DX事例の現状と課題②アナログな商習慣
不動産業界では、いまだにアナログな商習慣が多く残っています。
例えば顧客とのやり取りは電話が多く、1日に何十件もの電話対応をすることも珍しくありません。
ほかにも、物件の図面や設計図は紙ベースですし、契約書や重要事項説明書などのやり取りもFAXが多く用いられています。
こちらがいくらデジタル化したくても、物件のオーナー側が対応していなければDX化を無理やり進めることはできません。
不動産業DXで必要なのは、まずデジタイゼーションを導入してDX化を進め、そこから不動産業界の変革となるデジタライザーションを実施していくことなのです。
不動産業DX事例の現状と課題③DXに精通した人員不足
DX化が遅れている不動産業界では、もともとの人手不足も相まってIT人材やDX人材が不足しています。
だからといって、新たにITを担当する情報システム部署を作り、デジタル技術活用に精通したDX人材を雇用できる企業は多くないでしょう。
不動産業界でのDX推進には、外部の協力が不可欠であるともいえるのです。
不動産業DX事例の現状と課題④消費者ニーズの変化が目まぐるしい
不動産の消費者ニーズは時代とともに変化するのが当たり前ですが、近年そのスピードが上がっていると言われています。
都心の高層マンションブームが起きたかと思えば、テレワークが可能な郊外の一軒家が人気となるなど、消費者が求める不動産の移り変わりが目まぐるしく、その対応はどんどん難易度が高くなっています。
また少し前は、店に訪れて物件探しをするのが一般的であったのが、今ではスマートフォンで物件を絞り込んでいくといったニーズが顕著です。
不動産業DXの導入には戦略と一定の期間が必要となりますが、消費者ニーズの変化が速すぎて改革が追いついていかないという声も聞きます。
不動産業がDXを活用するメリット
不動産業DXの導入効果は、確かに即効性はないかもしれません。
しかし多様なニーズに応えるためのメリットが期待できるのも事実です。
ここからは不動産業がDXを活用するメリットについて考えていきましょう。
不動産業DXの活用メリット①業務効率化の実現
最も大きな活用メリットは、業務の効率化です。
不動産業界で長い間行われていたアナログ作業をデジタル化することで、情報の管理がしやすくなり、社内だけでなく社外でも情報の共有ができるようになります。
分厚いファイルを持ち運ばなくても、タブレットがあれば顧客が希望する物件を検索し、すぐにその場で提示することが可能です。
またアナログ作業で起こりがちな人的ミスを減らしたり、作業工程を簡略化したりすることにもつながるでしょう。
不動産業DXの活用メリット②新サービスの提供ができる
新サービスの提供は、新しい顧客の確保につながります。
例えば、不動産業界で急速に進んでいるインターネットでの物件探しは、店舗のエリア外の顧客を呼び込むことが期待でき、新たな顧客層の発掘も期待できます。
デジタル化によって今まで蓄積してきた大量のデータを分析し、新サービスの提供を見出すことも可能です。
例えば首都圏にオフィスを構える企業が、地方にサテライトオフィスを構える地方創生を後押ししたり、中古物件の新しいリノベーションに着手したり、DXによって期待できるサービスはかなり大きなものとなるでしょう。
また内覧の受付予約やリモートによる物件の鍵管理、さらにスマートシステムの導入で内覧予約時間前にエアコンのスイッチをオンにするといったサービス提供も可能です。
新サービスの提供は、不動産業界で働く人の負担軽減になるだけでなく、顧客の満足度アップにもつながります。
不動産業DXの活用メリット③コスト削減
不動産業界の商習慣である紙ベースの契約書や物件情報の管理は、人の手でなければ管理することができません。
近年、人件費は高騰を続けていますから、こうした情報管理をデジタル化できれば大幅な人件費削減が可能になります。
また紙ベースの業務は、印刷や消耗品にかかるコストが膨大です。
こうした日々のコストを省くことができるのも、不動産業DXのメリットでしょう。
不動産業DX導入企業のDX事例
なかなか難しいとされる不動産業DXですが、企業によってはDX推進によって成功した事例もあります。
ここではその一部を紹介していきます。
不動産業DX導入企業①三井不動産株式会社
三井グループの総合不動産デベロッパーである三井不動産株式会社では、さまざまな場面でDX推進への取り組みを行っています。
物件購入における書類の電子化
三井不動産では物件購入に関する書類・手続等をすべて電子化し、会計システムにおいてもクラウド化を導入することで業務効率を改善させました。
オンライン内見の活用
同社では、AIカメラを活用したオンライン内見を進めています。
対面による内見は、顧客や従業員にとって負荷が多く、1日に回れる物件数が少ないのが課題でしたが、オンライン内見の実現により、顧客が事前にある程度物件を絞り込むことができるようになり、契約に至るまでの大幅な時間短縮につながっています。
柏の葉スマートシティのタウンマネジメントを実現
三井不動産では、一般社団法人UDCKタウンマネジメントと協力し、柏の葉スマートシティの街づくりを実現させました。
具体的には、柏の葉キャンパス駅の周辺街区にAIカメラを設置し、駅前混雑の解消や防犯・見回りに役立てています。
このように三井不動産では積極的な不動産業DXの取り組みを行っており、同社ホームページでは取り組み事例をまとめたDX白書の公開も行っています。
不動産業DX導入企業②野村不動産ソリューションズ株式会社
野村不動産ソリューションズ株式会社も、独自の不動産業DXを進めている企業です。
住宅ローン手続き代行サービス「いえーるダンドリ」の導入
野村不動産ソリューションズでは、住宅ローン手続き代行サービスである「いえーるダンドリ」を導入しています。
住宅ローン選びは、物件購入者にとって手続きが非常にややこしい問題と言われてきました。
野村不動産ソリューションズはiYell(イエール)株式会社が提供するスマートフォンアプリを導入し、住宅ローン選びから契約書類提出までのサポート体制を整えました。
働く人の「WORK」と「LIFE」をサポート
野村不動産ソリューションズでは、オフィスを働く場として提供するだけでなく、ワークライフバランスを保つための場と考えています。
そこでリモートワークなどをサポートする「フレキシブルワーク」、専門スタッフによるビジネスツール提案サポートの「ビジネスソリューション」、ビジネスセミナーやビル内交流会など「スキリング」、フィットネスジムなどの「ウェルネス」の4領域についてサービスを提供しています。
ほかにも物流倉庫内のソリューションにも力を入れており、不動産業界全体のDX推進にむけた取り組み事例の代表格です。
不動産業DX導入企業③きらめき不動産株式会社
横浜に拠点を置くきらめき不動産株式会社は、中小企業でありながらDX化を実現させた事例です。
不動産オーナーが効率的に物件を管理するには、これからの時代、アプリが必要だと考え、オーナー向けの不動産管理アプリ「WealthPark」を導入しました。
チャット機能やワークフロー機能を兼ね備え、オーナーへの収支報告などコミュニケーション向上に役立てています。
ほかにも、ひとつの不動産に対して複数人で投資をする「不動産小口化商品」を実現するため、クラウドファンディングシステムを構築、新しいビジネスモデルを確立させました。
不動産業DX導入企業④アットホーム株式会社
日本全国の不動産業社を顧客とするアットホームは、2つの側面からDXへ取り組んでいる企業です。
顧客である不動産会社へのDX
従来、消費者が内見を希望する場合、仲介業者を介して不動産管理業者へ内見申し込みをするのが一般的でした。
この際、申込書や名刺の提出を電話やFAXで行っていましたが、スマート内見管理の導入で内見申込がオンライン上で完結できるようになり、不動産会社の業務負担軽減につながっています。
社内業務DX
不動産業界では入居申込書ひとつをとっても、管理会社と家賃保証会社とでフォーマットが異なるなど、記入する書類が違っていました。
膨大な不動産情報をその都度、手作業で書き写したり入力し直したりする必要があり、業務の負担や人的ミスなどが課題でした。
不動産情報流通プラットフォームである「ATBB」を導入することで、書式をオンライン上で統一、さらに膨大なデータをITで一括管理できるシステムを完成させることで社内業務の大幅な削減を実現しています。
不動産業のDX化をご検討の方はMabuhayTechへ
多くの業界でDX化が進められていますが、不動産業界ではいまだにDXを導入している企業は少ないのが現状です。
不動産業界では長い間、物件管理や契約書などは紙ベースで行われており、アナログ作業が商習慣化しています。
しかしインターネットでの物件探しなど、消費者ニーズはDXを必要としています。
不動産業DXには、業務の効率化・新サービスの提供・コスト削減など様々なメリットをもたらす可能性があり、速やかにDX化を進めることが急務です。
大手不動産企業だけでなく、中小企業でもDX化による成功事例があり、より多くの不動産会社がDX化に取り組むことが期待されています。
MabuhayTechでは、不動産業DXの導入サポートを行っています。
「紙ベースの膨大な顧客情報をもっと手軽に管理したい」「お客様がもっと簡単に物件探しできるようにしたい」など、不動産業で可能なDXにはいろいろあります。
小さなDX化であっても、そこから生まれる改革は大きな未来を生み出します。
MabuhayTechは業界や規模にかかわらず、デジタルテクノロジーで開く明るい未来を応援する企業です。
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