様々な業界で、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進められています。
デジタル技術を導入し、私たちの暮らしをより良いものへと変えていくDXの取り組みは、人材不足やインフラ設備の老朽化など、多くの課題を抱える建設業界では急務だと言われています。
今回の記事では、「インフラDXとは」「インフラDXにおける3つのアクションプラン」などについて詳しく解説していきます。
実際に導入されたDX事例も併せて紹介していきますので、インフラDXを検討されている方はぜひ参考にしてください。
インフラDX事例紹介の前に。インフラDXとは?
インフラDXとは、デジタル技術を活用し、社会資本や公共サービス、つまり私たちの暮らしをより良いものへ変革することを指しています。
従来、インフラというと、鉄道や道路、電気・ガス・水道、公共施設など、私たちの暮らしに欠かせない設備を建設・維持していくことを指してきました。
これらの作業は、長年多くの人の手により支えられてきましたが、人口減少による労働力不足が問題となっている日本では、建設業界で働く人たちの人材確保が難しくなっています。
そこで注目されているのがインフラDXです。
建設業界とデジタル化は一見関係がないように見えますが、インフラ事業でIoTやAIを活用できることは意外に多くあります。
例えば、高度成長期に建設されたインフラ設備は老朽化が進み、速やかに老朽箇所を診断して修理しなければなりません。
人が入ることが難しい場所へも、ドローンを使えば撮影・データの収集が可能です。
大規模な公共設備の施工現場では、施工を請け負うゼネコンだけでなく、多くの協力業者によって作業が進められています。
こうした現場で、タブレットやウェアラブルカメラを活用すれば、現場管理や作業の効率化を図ることが可能です。
国土交通省では、2022年に「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定し、インフラDXの推進を掲げています。
労働力不足だけでなく、近年甚大化・頻発する自然災害等への速やかな対応が期待できるインフラDXは、私たちの生活や経済活動を支えるために必要不可欠なのです。
インフラDXの事例に向けた3つのアクションプラン
国土交通省では、インフラDXにおいて3つの柱を掲げています。
- 「行動」・・・対面主義にとらわれない働き方
- 「経験・知識」・・・AI活用で熟練技能を継承
- 「モノ」・・・BIM/CIMの導入による建設生産プロセスの変革
さらに、これら3本柱を推し進める具体的なプランとして、2022年3月に3つのアクションプランを策定しました。アクションプランとは、デジタル技術を活用してインフラ周りをスマートにする取り組みです。
では具体的な施策をみていきましょう。
インフラDXアクションプラン①行政手続きのデジタル化
インフラDXのアクションプラン一つ目は、「行政手続きのデジタル化」です。今まで公共工事を行うための行政手続きは、紙ベースかつ対面で行われてきました。
例えば、特殊車両を使用するための「特殊車両通行許可」を窓口で申請すると、申請から許可が下りるまで約1か月かかります。しかも経路設定は、申請者が出発地から目的地まで片道ごとに、細かく指定しなければなりません。
しかしながら、行政手続きをデジタル化することで、インフラ関連の各種手続きの多くがオンラインで完結できるようになりました。
「特殊車両通行許可制度」は「特殊車両通行確認制度」へと変わり、審査期間は即時と大幅な短縮が実現、経路は自動的に複数経路(往復)が検索可能になるなど、”行政手続きは面倒で時間がかかる”といった不満の解消に役立っています。
インフラDXアクションプラン②情報の高度化およびその活用
インフラDXアクションプラン二つ目は、「情報の高度化およびその活用」です。
具体的には、BIMやCIMといった3次元データを積極的に活用し、受発注者だけでなく、現場で働く関係者や地域住民など、幅広い関係者間での情報共有が実現可能になりました。
こうした高度なデジタルデータやタブレット等のモバイル端末は、様々な方向でのコミュニケーションを活性化し、地域住民へインフラ工事の理解協力を求めたり、現場で働く作業員の安全性を高めたりするのに役立っています。
また3次元データやIoTを活用した画像データは、災害時の避難行動や被害状況の確認など、緊急時の速やかな対応にも利用可能です。
インフラDXアクションプラン③現場作業の遠隔化・自動化・自律化
インフラDXは現場作業においても有効です。
建設業界で最も深刻な課題は労働力不足ですが、デジタル化によって現場作業の遠隔化・自動化・自立化が進むことで、こうした問題の改善が期待されます。
例えば、情報通信技術を取り入れたICT建機の導入です。
今まで難しい現場作業では、経験を積んだオペレータによる重機の操作が不可欠でしたが、ICT建機は、位置検測装置であらかじめ入手したデータをもとにして、操作ガイダンスを自動で行います。
そのため、経験の少ない若手オペレータであっても、難しい現場をこなすことが可能になります。
建機の遠隔化も、作業効率アップが期待されるDX化です。
施工現場にある遠隔操作対応の建機を、離れたオフィスにあるコックピットから遠隔操作して作業を進めます。
オペレータの現場間移動がなくなり、業務効率化につながります。
このようにインフラDXは、現場の属人化解消へ大きな期待がされているのです。
インフラDXの事例
ではインフラDXにおいて、実際に導入されている事例はどのようなものなのでしょうか。
私たちの身近なインフラDXの取り組みを、わかりやすく紹介していきます。
インフラDX事例①清水・五洋特定建設工事共同企業体
清水・五洋特定建設工事共同企業体は、東京国際空港内のトンネル工事にてAIシステムを導入しました。
シールド工事は通常、既存している構造物を避けて作業するため複雑化しやすく、工事に多くの労力を費やしてきました。
現場で人の手によって測量された値を手作業で入力し、それをもとに作成した指示書を紙ベースで配布、現地の作業員による目視によって操作盤に入力し、シールド機操作を行うなど、手作業・手入力が多いシールド工事では、膨大な労力と人為的ミスの発生が課題となっていました。
そこで導入したのが、様々な掘進データとオペレータの操作判断を学習するシステム「施工計画支援AI」と、オペレータの操作ルールをモデル化した「掘進操作支援AI」を組み合わせたものです。
これにより、施工管理を効率化するとともに、高い精度の確保実現を成功させました。
インフラDX事例②中電技術コンサルタント
中電技術コンサルタント株式会社は、天然ダムや砂防関係施設の調査や点検においてUAV(ドローン)を活用しています。
山間部にあるダムなどで大規模な土砂災害が起きると、何日間も現場に人が入れず、状況把握に時間がかかっていました。
こうした現場でUAVを使うことで、危険な災害現場に人が立ち入ることなく迅速に状況を把握することができ、その後の復旧作業や避難指示に大きく役立つことが実証されました。
山間部など通信電波が不安定な場所では、撮影用UAVと中継用UAVの2機体を同時飛行させることで、電波中継遮断の課題も解決しています。
私たちに身近なドローンも、インフラDXを力強く支える存在です。
インフラDX事例③金杉建設株式会社
金杉建設株式会社は、小規模なインフラ工事へDXを導入し高い評価を受けました。
埼玉県が発注した橋の架け替え工事に伴う迂回路の整備工事では、もともと慢性的に渋滞が発生する区間であったため、近隣の住民負荷を最小限に抑える必要がありました。
そこでICT重機を活用し、作業を効率的かつスピーディーに行えるようにしたのです。
通常の重機では、掘削や盛り土の際には地面に印をつけます。印といっても簡単なものではなく、「丁張」といって杭を打ったり木枠を設置したりする手間のかかる作業です。
若手の作業員が2~3人がかりでやることが多く、人手不足の現場では時間も手間も掛かってしまいます。
さらに掘削中に重機と接触して丁張がズレてしまい、やり直すことも少なくありません。
ICT重機では、あらかじめ測定しておいた3Dデータを入力しておくと、システムが機械の操作補助をしてくれ、どの場所をどのくらい掘ればいいのか教えてくれます。
丁張による印の必要はなく、設計データよりも深く溝を掘ろうとした場合には、マシンが自動的に止まって掘り過ぎを防いでくれるのです。
金杉建設の取り組みは、「インフラDXは大規模工事で活用するもの」という概念を打ち崩し、小規模工事でも活用が可能であるという実例をほかに示した形となりました。
インフラDX事例④竹中工務店・ドコモ
竹中工務店とNTTドコモは、自動車移動の効率化を目的とした「建設MaaSオンデマンド移動&搬送」の実証実験を開始しています。インフラ工事の建設現場では、ヒトやモノの動きが活発です。
例えば、現場の管理を任せられている人が、複数の現場を行き来したり、事業所と現場を往復するのは当たり前、作業中に資材が不足して事務所の保管倉庫に取りに戻る、ということも珍しくありません。
竹中工務店は、建設中の交通・物流・サービスに関わる課題を解決するために、ドコモが開発した「AI運行バス」の仕組みを応用し、貨客混載輸送のオンデマンドサービス開発に取り組んでいます。
竹中工務店が実現したいのは、私たちの暮らしをスマートにするインフラDX。その取り掛かりとして、ヒトとモノを好きなタイミングで同時に輸送するサービスの実証実験を実施したのです。
人が移動したいときは、スマホで乗車予約をして車両を利用、車両は乗り合いで乗車・降車ポイントをあらかじめ登録しておきます。
車内はPC作業ができるようモバイルデスク完備となっており、移動時間を無駄にすることなく仕事を続けることが可能です。途中のポイントでは、人だけでなくお弁当や建築資材の搬入・配達なども可能で、効率よく貨客混載輸送ができるよう工夫がされています。
こうしたインフラDXにおけるMaaSの取り組みは、海外ですでに実装されている国もあり、交通渋滞緩和・排ガス排出削減・人や資材の到着遅延防止・スムーズな乗継や乗換など、インフラ工事が抱える課題の解決に役立つことが期待されています。
また「建設MaaSオンデマンド移動&搬送」は、建設現場だけでなく、完成後の「まちDX」へ展開することを予想しているものです。
既存のプラットフォームを「まちの暮らし」へと活用し、より暮らしやすいまちづくりへと活かすこの取り組みは、業界を超えたおもしろいDX事例といえるのではないでしょうか。
インフラDX化をご検討の方はMabuhayTechへ
デジタル技術を活用し、私たちの暮らしをより良いものへ変革する、インフラDXの取り組みが始まっています。
インフラ工事では多くの労働力が必要とされますが、人口が減少している日本では建設現場の人手が足りていません。
そこでIoTやAIなどのデジタル技術を活用し、老朽化したインフラ設備の点検・診断を行ったり、人の立ち入りが難しい場所へドローンを投入して撮影・データ収集を行ったりするインフラDXが注目されているのです。
国土交通省でも「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定、①行政手続きのデジタル化②情報の高度化およびその活用③現場作業の遠隔化・自動化・自律化、といったインフラDXの推進を掲げています。
実際に、東京国際空港内のトンネル工事や天然ダムや砂防関係施設の調査や点検などで、AIやドローンなどが活躍し、ヒトとモノが同時に移動できる配車サービスなどの実証実験も行われており、インフラDXは私たちの身近な取り組みとなっています。
インフラDXに欠かせないのがエンジニアです。
しかし必要とされる人材は、その目的によっても異なります。
例えば既存の技術をベースに、新しい技術を加えてインフラの構築・運用する場合は、ゴールの決まった開発を得意とする「インフラ系エンジニア」が必要とされます。
一方、全く新しい技術をベースにDXを進める場合には、アジャイル型の開発を得意とする「DX系エンジニア」と一緒に、まずは解決すべき課題の設定から始めるべきです。
このようにインフラDXとは、どのような目的でDX化を進めるのかによって、エンジニア選びが変わってくるのです。
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フィリピンは国を挙げてIT人材の育成に取り組んでおり、優秀なITエンジニアがたくさんいます。
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