マンパワーや職人気質といった、人の手で日本の産業を支えてきた製造業は、今、大きな分岐点を迎えています。
それは「製造業のDX化」です。
人の手によるものづくりがメインであった製造業において、すぐにデジタル化していくことは正直難しいでしょう。
しかしながら製造業の未来を考えたとき、DXの導入は大きなメリットが期待できます。
今回の記事では、「製造業DXの現状と課題」「製造業DXにおける課題の解決策」「製造業DXによって実現できること」について詳しく解説していきます。
また製造業において、実際にDX化された事例についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
製造業のDX事例を解説・製造業DXとは
製造業DXとはコスト削減や生産性を上げるために、ものづくりである製造現場でITソリューションを導入していくことを指しています。
一般的には製造工程をDX化し、生産性アップや効率化を図ることが注目されていますが、製造業DXとはそれだけではありません。
工場や生産に係わるすべての工程が対象となり、例えば工場入り口の守衛所受付の無人化や、総務経理の管理、品質管理、カスタマーサポートなど間接業務におけるDX化なども含まれます。
製造業DXをいきなり大規模に行うことは、いろいろな障壁を生むリスクが高いのでおすすめしません。
初めは取り組みやすいところ、間接業務のDX化などから試していくことがポイントになります。
製造業のDX事例を解説・製造業DXの現状と課題
経済産業省が「ものづくり白書2021」で公表していますが、現在国を挙げて製造業のDX化を推進しています。
しかしながら実際には、製造業でDXを実施している企業は、2023年現在で22.8%にとどまっています。
製造業が直面している現状と課題についてみていきましょう。
製造業DXの課題①「DX人材の不足」
日本の労働人口は減少し続けています。
少子高齢化が進む日本では、今後労働人口が増加することは期待できないでしょう。
日本の製造業では、優れた現場力がものづくりを支え、世界中に「Made in JAPAN」が知れわたるほど高水準を保ってきました。
それを支えてきた現場重視という考えは根強く、多くの工程で属人化を招いているとされています。
こうした状況で、製造業の人手不足は深刻です。
長年培ってきた技術を継承する人材が集まらないのです。現場での人材不足が深刻な中、さらに専門知識を有するDX人材を確保するのは非常に困難です。
製造業で活躍できるデジタル人材は、IT分野のスキルを持つだけでなく、製造業の特徴を把握している人材が望ましいと言われています。
製造業で直面しているのは、DX人材の不足と現場を担う人材の不足、二重の人材不足といった課題があります。
製造業DXの課題②「最適なIT投資ができていない」
製造業だけでなく日本企業は従来、「オーディナリー・ケイパビリティ」を重視した改革を行ってきました。
オーディナリー・ケイパビリティとは、生産性や効率性を追求する考え方で、「ものごとを正しく行う」ための能力と言われています。
これまで日本の製造業は、オペレーションや管理を徹底し、生産をベストな状態に持っていくことでコストコントロールしてきました。
これにより得られるものは“効率性”です。
しかしながら、世界的変化が著しい今の世の中では、オーディナリー・ケイパビリティでは対応しきれなくなっています。
変化を敏感に感じ取り、時にはビジネスモデルを抜本的に変革するような動きがなければ、企業として生き残れないと言われているのです。
そこで必要とされるのが「ダイナミック・ケイパビリティ」です。ダイナミック・ケイパビリティで得られるものはイノベーションであり、そのためには「正しいことを行う」といった志向が優先されます。
製造業では、未だダイナミック・ケイパビリティへの投資が少ないのが現状です。
従来の基幹システムや維持メンテナンスへの投資を重視するオーディナリー・ケイパビリティは、平時の際には生産性アップに繋げることができますが、不測の事態には対応できず、大幅な減収・減益となるリスクを孕みます。
時代の変化が著しい現代こそ、ダイナミック・ケイパビリティを意識した取り組みをすべきなのです。
製造業DXの課題③「属人的業務の共有」
製造業では長年、現場主義・職人文化が築き上げられてきました。それにより業務が属人化していることは問題です。
属人化とは、特定の人しか作業手順や情報を把握できていない状態を指します。
確かに専門的なスキルが求められる現場では、「手の感触での判断」「音の違いを感知」「振動を感じる」など、口頭やマニュアルでは伝えにくいこともあるでしょう。
一方で、「忙しくて誰かに教えている時間がない」「少人数であるため作業を伝承すべき人材がいない」などが原因で、属人化が進んでしまうこともあります。
属人化は、担当者が不測の事態で仕事を離れた時、企業全体の業務がストップしてしまうリスクがあり、早急に対策すべき課題なのです。
製造業DXの課題や解決策・DX事例
ここまで、製造業におけるDX化の問題がいろいろ見えてきたことでしょう。
では、明るい将来を見据えた製造業DXのためには、どのような解決策があるのでしょうか。
製造業DXの解決策①「DX人材の採用・育成」
まずはDX人材の育成です。DX化に向けたAI設備やツールなどは日々進化しています。
ただしこれらは、何も知らない素人が簡単に扱えるものではありません。そこで必要となるのがDX人材です。
製造業に必要なDX人材は、デジタル技術のスキルが高いだけでは活躍することが難しいでしょう。
製造業の専門知識も併せ持ったDX人材が最適です。ただ、こうした条件を満たした人材の確保は非常に限られています。
自社にとって必要なスキルを持ったDX人材を、積極的に採用していくとともに、新たなDX人材を育てていくことも大切です。
社内の現状をよく理解しているけれど、ITの専門的スキルが足りない場合、IT技術やDXの基本を学ぶ場を設けてデジタル教育を施すことで、自社内でDX人材の育成が可能になります。
もちろん社内での育成は、即戦力として成り立つものではありません。
しかしながらDX人材の確保が今後ますます困難になると予想されている日本では、自社で育成できることは長期的にみれば大きな強みとなります。
初めのうちは外部に委託しながらDXを進め、将来は自社で製造業DXを進めていけるよう変革してみるといいでしょう。
製造業DXの解決策②「データ活用を推進する」
インターネットの普及により、データ量が膨大に拡大し、これらビッグデータを様々な分野で活用しています。
ビッグデータ自体はとても有用なデータですが、これらは収集しているだけでは何の役にも立ちません。活用してこそ、有意義なものとなるからです。
製造業ではビッグデータを用いて、工場設備や製品の品質などの管理が可能になります。
工場のラインにセンサーを設置してデータを取得すれば、品質低下を招いているラインを特定することもでき、設備トラブルの早期発見も可能です。
またビッグデータのデータ利活用は、製品開発におけるヒントや、売り上げが鈍い製品の問題点の把握など、製品の新たな付加価値にもつながります。
DX化とデータ利活用は切り離せない関係であり、企業が活動していくうえで大きなカギなるでしょう。
製造業DXの解決策③「ダイナミック・ケイパビリティを意識する」
先ほど、ダイナミック・ケイパビリティを意識した投資が必要だと述べました。
製造業でダイナミック・ケイパビリティを重視している企業はまだ少ないです。
だからこそ、今切り替えることで他社との競争において優位に立てる可能性があります。
ダイナミック・ケイパビリティには、「感知(センシング)」「捕捉(シージング)」「変革(トランスフォーミング)」といった3つの要素があります。
感知は課題や危機を迅速に感知すること、捕捉は今あるリソースを活用すること、変革は社内構造やシステムを再構築し、最適化していくことです。
製造業でDX化を推進していくには、これら3つの要素が重要となります。
製造業DXによって実現できること・DX事例を解説
情報通信業や金融業など、DX化が急速に進められている業界とは異なり、製造業でのDX化はまだあまり進んでいません。
しかし世界中で効率化や自動化が求められている製造業界では、DX化の導入が企業の成長を左右することは間違いないでしょう。
では具体的に製造業においてDX化を進めていくと、どのようなことが実現していくのでしょうか。
製造業DXによって実現できること①生産性の向上
製造業で最も重要視される生産性は、DX化によって向上させることが可能です。
例えば生産ラインをすべて自動化しなくても、一部において半自動化することで、その分の人的リソースをほかに回すことができます。
経験やスキルなどの面から属人化してしまっている作業も、工程を見直し、できる部分からDX化することを考えましょう。
機械化することで手作業が減り、より付加価値が高い業務へ人材を配置することが可能となります。
またDX化による事務的業務の自動化やペーパーレス化は、紙媒体での記録管理が主となる製造業では生産性の向上、管理体制の強化も図れるでしょう。
製造業DXによって実現できること②情報の可視化
IoTによるデジタル技術の活用は、「見える化」の実現が得意です。
例えばラインにセンサーやカメラを取り付けることで、設備の状況や生産工程に関するデータの一元化が可能になります。
もし何らかのトラブルがあった場合にも、可視化されていることで問題解決はスムーズです。
また物流の最適化や顧客データからの販売予測など、製品の品質維持やコスト削減にも可視化は有効です。
業務を可視化することで、新たな技術開発や新規の顧客開拓につなげることも期待できます。
製造業DXによって実現できること③顧客満足度の向上
製造業というと、製品の品質向上や製作期間の短縮が顧客満足度をあげる手段と考えられてきました。
製造業DXではもちろん、こうした既存の価値のさらなる向上を目指すことができますが、それ以外にも新たなサービスの提供が期待できます。
例えばAIを活用した生産数予測を行うことで、在庫の欠品や余剰を防ぎ、顧客が必要な時に必要な数を提供できるようになります。
また画像認識技術の導入は、製造ラインの不良品を自動で検知し、品質の安定が保てるのが魅力です。
人の目で行っていた品質管理をDX化することで、結果として生産量を増やすことにもつながります。
製造業DXの課題解決とDX事例
日本国内の企業で、実際にDX化を実現した事例を紹介していきます。
物流DX導入企業①ダイキン工業株式会社
世界有数の空調メーカーであるダイキン工業株式会社は、「工場IoTプラットフォーム」によるDX化推進に取り組む企業です。
大阪・堺市にある工場では、工場内のすべての設備をネットワークでつなぎデータを収集、工場内にあるプロジェクトセンターですべてをデータ管理しています。
ラインに取り付けられたセンサーやカメラで、リアルタイムに生産状況を把握、設備機材の故障や異常、生産の遅れなどを素早く検知し、現場にフィードバックすることで、すぐに問題を改善させています。
この工場IoTプラットフォームにより、ひとつひとつ仕様の異なる受注生産品を効率的に大量生産し、納期を6割短縮させて顧客満足度の大幅アップとなりました。
ダイキンでは工場のIoT化を挑戦のスタートと位置付けています。
この先10年、20年後も空調技術のトップを走りつづけるために、これからもIT人材の採用・育成に努めていくとしています。
物流DX導入企業②株式会社LIXIL
国内最大手の建材・設備機器メーカーである株式会社LIXILは、DXに取り組む企業として高い評価を受けています。
例えばオンラインショールームでは、来場できない顧客に対しオンラインで接客し、3Dの完成予想イメージや見積もりの即時提供をすることで、顧客満足度アップと販売プロセスの効率化を実現しています。
またIoT技術の活用により、さまざまなスマートシステムを開発、より安心・安全な住まいの実現にむけて新規事業を創出している企業です。
ほかにも顧客だけでなく、従業員にデジタル基礎教育を提供することで、現場の従業員自らがシチズンデベロッパーとして独自の業務ツールを開発、納期の短縮に貢献しました。
物流DX導入企業③株式会社クボタ
世界中に建設機械や農業機械を販売している株式会社クボタは、AR(拡張現実)の技術を活用し、スマートフォンをかざすだけで建機・農機の故障診断ができるアプリを開発しました。
これにより機械のダウンタイムを大幅に削減、機械の稼働率が下がることで発生する収益減の解決を実現しています。
建機・農機に故障が起きたときに、実際に修理するのは現地の担当者です。
しかし世界各国で使用されているクボタの機械では、販売店のメカニック技術にばらつきがあるのが課題となっていました。
もし現地に熟練した担当者がいない場合、原因究明が長引いたり、修理がスムーズに行われなかったり、当然ダウンタイムは長くなります。
機械が使えなければ現場での作業ができず、結果として収入が大きく減りかねません。
このアプリでは、スマートフォンを機械にかざしトラッキングすることで、機械内部の構造や故障個所を可視化、解決方法を導いてくれます。
経験や知識に頼らない故障診断フローの提供は、世界中で使用されているクボタの建機・農機の修理環境を向上させ、利用者の満足を高める取り組みとなっているのです。
DX化をご検討の方はMabuhayTechへ
日本の産業を支えてきた製造業において、本格的にDX化へ取り組んでいる企業はまだまだ少ないです。
しかし変化が著しい今の世の中において、製造業DXは急務であると考えられています。
DX人材を積極的に採用・育成、ダイナミック・ケイパビリティを意識した投資、属人化業務の共有など、製造業に求められるDXはいろいろあります。
すべてを一気にDX化することは、現場を混乱させるリスクもあり最良の手段とは言えないでしょう。
間接業務など、まずはできることからDXに取り組み、徐々に企業変革を推進していくことをおすすめします。
DX化というと、大規模な設備投資をしないと実現できないと考える企業は少なくありません。
しかしながら、ソフトウェアやツールなどを導入したIT化により、企業のDXが進むきっかけとなるケースは数多くあります。
MabuhayTechでは、ビジネスの業界や規模に関わらない、高品質なソフトウェア開発サービスを提供しています。
いくらDX化を推進したくても、自社でDX人材を確保して開発を進めていくことは、並大抵のリソースでは実現できません。
そこで新たな手段となるのがオフショア開発です。
IT業界が急速に成長を遂げている国々では、優秀なIT人材が育っており、DX化実現に向けた開発業務を担っています。
MabuhayTechは、オフショア開発国として人気があるフィリピンに拠点を構えています。
DX化の第一歩は、まずはできることから始めることです。
DX化は大企業だけの選択肢ではありません。限られたリソースの中小企業こそ、オフショア開発を利用したDX化を推進すべきです。
MabuhayTechで可能なことはたくさんあります。
AIや業務効率化システム、テータ分析ツール、アプリ開発など、まずはDX化の第一歩を進めてみませんか。
一緒に明るい未来を考えていきましょう。